街のあかり
2007年 07月 23日
とにかく主人公の孤独感と悲しみが突き刺さりました。友人も家族も恋人もいない。しがない警備員の仕事で生計を立てているものの、仕事後に仲間から飲みに誘われることもなく、ひとりで企業セミナーに通う日々。そんな孤独な世界を生きる主人公の前に不二子ちゃんみたいな魔性の女が現れ、彼は一瞬にして恋に落ちる。いやーわかる。わかるなあ。幸いにも俺には週末飲んだり一緒にフェスに行く仲間や、実家に帰れば家族がいるわけですけども、いつまたひとりぼっちになるかもしれないわけじゃないですか。いや、俺なんてね、ほんと一歩間違えればこの主人公のように孤独を抱えて生きていたかもしれないわけで、それは本当に他人事ではないわけなんですけども、そんなとき自分に何が残るのかって言ったらそれはちっぽけなプライドしかないわけで。そんなスッカスカで頼りない心の隙間を埋めてくれるような女性が現れたらそりゃ好きにもなっちゃいますよ。最近の古谷実作品に出てくる主人公のようにたぶんびっくりするくらい浮かれちゃうと思う。だからこそ主人公のデートに行く前の中学生のような気合の入りっぷりや、ソファで隣に座った彼女の肩に一生懸命手を回そうとして即振り払われる姿は、将来の自分の姿を見るようで涙を禁じえなかった。
やがて不二子ちゃんはあっさり男を裏切るわけですが、その裏切りによって罪を着せられ刑務所に送られても男は信じ続ける。信じ続けるって言うより自分のプライドや美学を捨てきれないだけなんだよね。男ってばかだなあ。そして仮出所した主人公のもとにある女性が訪れる…。結局大切な人は自分の一番近くにいるんだよっていう展開はベタといえばベタなのですが、だからこそラストの切ない余韻が胸に迫りました。何度でも言いますが俺はこの人の映画が好きすぎる。